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由美江おばさん(9)

おばさんは「片付けが嫌になるから」と一旦撤収して片付けて、ビールから焼酎に切り替えた。 アルコールが適度に、いやそれ以上に回ってる酔っ払いの俺達は、こちらも結構酔いの回ったおばさん達を相手に、達也がいかにいい男か、どれだけ弘毅のことを真剣に考えているか、2人がどれだけ愛し合っているのか、まるでプレゼンのように語り尽くした。 「ほほう。」「なるほど。」としか言えなくなったおじさんは 「続きは明日聞くからね、お休みー!」 と、さっさと離脱してしまった。 後に残されたおばさんも呆れ顔で 「もう、分かった、分かったわよ! 耳タコ。タコがぶら下がってる。 とにかくどんなことをしても絶対に加奈子は連れて行くから。 今夜はお開き。はい、お休みなさい!」 と、こちらも退散してしまった。 家主2人がいなくなり、ポツンと残された俺達は、すごすごとグラスを洗い始めた。 「茂明、何かマズかったか? まさかプレゼン失敗したか?」 「いや…失敗は成功の元!? にーちゃん、俺喋りすぎたかな…」 「お前じゃねぇ。俺かも…」 「でもおばさん、お袋を絶対連れて行くって。 とにかく達也に会わせれば何とかなるから。」 「そうだな。なるようになる。 さ、片付けたら俺達も寝ようぜ。」 「はいよ。」 俺達はリビングの片付けを済ませると、用意された客間にそっと入った。 茂明は布団の上に大の字に寝っ転がった。 「はぁーーっ……にーちゃん、第一関門突破だな。 色々気ぃ遣ってくれてありがとう。 流石にーちゃんだわ。」 「何だよ、お前が褒めるなんて気持ち悪りぃ。 でも、こっちこそありがとうな。 お前がいたから場が和んだ。 俺だけじゃあ、そうはいかない。」 「ぶふっ、誉め殺しかよ。 あとは弘毅達の思いをどれだけ分かってもらえるか…」 「うん。絶対に……。 さ、寝ようぜ。流石に緊張したわ。疲れた。 お休み。」 「お休みー。」

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