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上京(1)
日曜の昼、イチャイチャタイムに突入する前に、弘毅の携帯が鳴った。
最初弘毅は出なかったが、あまりに何度も鳴るので観念したのか、画面を確認してから「ゴメンナサイ」と俺に断りを入れて寝室を出て行った。
暫く話し込んでいたようで、相手が気になったがすぐに分かった。
何度も弘毅から発せられる名前…大兄ちゃん――勝義だ。
何かあったのか。俺達のことが親にバレたんだろうか。
そうなったらそうなった時だ。
何が何でも弘毅は嫁に貰う!
憂い顔で戻ってきた弘毅は
「達也さん、ちょっとお話が…」
「うん、どうした?」
「実は……大兄ちゃんと小兄ちゃんで、おば…母の姉なんですけど…俺達のことで会いに行ったんだそうです。
段取りとして、おばが母を連れ出して俺達に会いに来る。
母に俺達のことを認めてもらう。
父は母の言うことには逆らえないので、母を先に納得させようって。
おまけに、父はおばのことが苦手だから、おばに母を連れ出してもらおう、そうすれば父はついてこない、ってことになったみたいです。
おば夫婦は『まだ認めたわけではない、実際に会ってからじゃないと』言ってるそうで…
俺たちの都合の良い日を教えてくれって…」
「凄いな!一歩前進じゃないか。
勝義、やるな……そのおばさんって、影響力が大きいみたいだが?」
「そうなんです。
議員にもなれるのに、って周囲からずっと言われてたようなひとです。
サバサバしてて頭が良くて人望もある、俺達の自慢の親戚なんです。
だから、おばを味方に付けたら絶対に上手くいくはず。
それを見越して、大兄ちゃんは話に行ったんだと思います。」
「そうか、俺達のために動いてくれてるんだな…
おばさん、って何処にお住まいなんだ?
まさか都内じゃないよな?
勝義と茂明、2人はわざわざ俺達のためにそこへ出向いてくれたんだろ?」
「金沢にいます。」
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