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上京(2)

勝義達の住まいからはかなりの遠距離のはず。 一本では来れない、乗り換えだって何度も必要だ。 その手間や煩わしさを考えるだけで頭が下がる。 ましてや、非常に言い難いお願いをしに行く訳だ。緊張感は半端なかっただろう。 胸がじわりと熱くなった。 俺はベッドの端に、遠慮がちにちょこんと座っている弘毅を背後から抱きしめた。 「俺達のために時間もお金も使って、今度はおばさんまで動いてくれるとは……感謝しかないな。 弘毅、お前は本当に愛されてるんだな。 俺はそんなお前と縁を結ぶことができて幸せだよ。 おばさんにもお母さんにも、絶対に認めてもらいたい。 俺という人間を知ってほしい。 弘毅、今更何をどうすることもできないかもしれないが、精一杯のことはやる。 だから……俺について来てくれ。」 弘毅の身体が震え出し、胸に回した腕に冷たい物が当たった。 「弘毅?」 弘毅は声も出さず、静かに泣いていた。 「弘毅。」 宥めるように目尻にキスをしてやった。 それに答えるように、くるりと身体を反転させた弘毅は、俺の膝に跨るように座り、腕を首に絡めて甘えるように肩に顎を乗せた。 「…… 現実に話が具体化してきたら、正直、怖かった…です。 大兄ちゃんに言われたように、母にも否定されたらどうしよう、って…… でも、達也さんがいてくれるなら、迷わない。 絶対に認めてもらいます!」 弘毅はそう言うと俺の顔を見つめて、涙で光る目を細めて笑った。 その笑顔が綺麗でかわいくて、頷きながらそっと唇に触れた。 ちゅっ、と大きなラップ音を立てて 「うん。結婚式は白いタキシードだな。」 「え?結婚式!?」 「同性婚をしてくれる評判の所があるんだって。 ご両親の承諾を得たら、みんなに来てもらって式を挙げよう!楽しみだな。」 「はいっ!」 鼻先を付け合う行為が熱を帯びていき、俺は弘毅の身体を横たえると、愛を確かめ合うことに没頭していった。

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