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上京(3)

「えっ、義姉さんと旅行!?何で、急に。」 「お義兄さんと行くはずだったんだけど急に仕事が入って行けなくなったんだって。 せっかくだから久し振りに2人で行こう、って誘ってくれたの。 旅費はいらないって!ラッキー! ついでに弘毅の顔を見てくる。ふふっ、何年ぶりかしら。ワクワクするわ。 ということなので、行ってきてもいいわよね?」 「うわっ、まさかの事後承諾。はあっ…義姉さんいるのか……」 「何?あなた一緒に行くつもり?」 「えっ……往復別便で行って弘毅の所でだけ合流してもいいかなぁ、って。」 「なーに言ってんのよ。せっかく姉妹(きょうだい)でゆっくりしてこよう、って誘ってもらったのに。 あなたがついてきたら邪魔よ! 例えついてきたとしても、別々に行動してどうするの?意味ないじゃない。そんなことしたら余計姉さんに文句言われるわよ。 それに、その週って仕事詰まってるんでしょ? 休み取れないってボヤいてたじゃないの。」 「そんな邪険にしなくても……」 「邪険にしてるつもりはないけど。 だって旅費は姉さん持ちなのよ? 私は義兄さんの代理でオマケなの。オマケは逆らえないの! とにかく、私1人で行ってくるから!」 「……俺だけ留守番か。」 「もうっ!いい加減に嫁離れしなさいっ! スーパーでもコンビニでも食べる物売ってるでしょ? いつも言ってるけど……私がいないと何もできないってのは、万が一私に何かあった時に、あなたが困るのよ。 自立しましょうね、繁さん。」 「…………」 「落ち着いたら、また今度弘毅の所には私達で行けばいいでしょ?」 「…………」 やぁだ。不貞腐れてる。 近所のスーパーにさえ一人で行けず、私が何処かへ出掛けるとなると、いそいそとついてきたがる。 「お土産、何がいい?美味しいスイーツ買ってくるわね。」 これ以上構うと面倒だわ。 そう思ってこの話を切り捨てて台所に立った。

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