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上京(4)

待ちに待った旅行当日。 姉さんとは新幹線の車内で落ち合うことにした。席は勿論隣同士。 ダンナは相変わらず不貞腐れてる。あの日以来、べったりひっつき虫が酷くなり後追いをする幼子のようで辟易していた。 いい加減にして。一体幾つなん!?いい年したオッサンが何やっとるん。たった3日やん!? こんな時くらい機嫌良く送り出してよ。 言いたい言葉全てを飲み込んで 「行ってきます!」 と問答無用で叫んで出てきた。 あーぁ。こんなことじゃあ定年後が心配だわ。 熟年離婚に発展しなけりゃいいけど。 ストレスの溜まる老後はお断りよ。 ため息をつきながら駅のホームに立つ。 姉さんとの久し振りの旅行。何年振りだろう。 体調は大丈夫なんだろうか。 それに……弘毅!どんな暮らしぶりをしてるのか…構い過ぎた私達も問題だった。それは反省している。 でも、子供は幾つになってもかわいいもの。末っ子となれば尚更。 うーっ、楽しみだわ。 遠くにライトが見えてきた。時間通りね。 指定席の号車の窓に懐かしい顔が見えた。 姉さんっ! 気が付いてお互いに手を振り合った。 「加奈子!元気やったん?」 「姉さん!誘ってくれてあんやと(ありがとう)! 身体、どう?」 「もう大丈夫よ。来てくれて助かってんて。こっちこそあんやと。 繁さん、お利口に留守番してくれてるの?」 「不貞腐れて大変だったの。本当に嫌になっちゃう!あんの(あの)だらぶち(ばか)。 義兄さんの爪の垢、マジで飲ませたいわ。」 「あははっ、やっぱりねぇ……大人なんだから我慢してもらって、私達は楽しまんなんわー!」 ここ何年かでやっとLINEなる物を駆使して話はするが、中々2人でこうやって面と向かって話す機会もない。 結婚してからは住んでる所も違うし、姉さんはバリバリの“キャリアウーマン”だったし。 幼い頃から何でもできて頼りになった姉さんは、お互いに家庭を持って歳を取り、少し身近な存在になった。

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