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上京(6)
お互い近況やら昔話やらしているうちに、あっという間に東京駅に到着した。
「はとバスに乗るでぇ!」
コインロッカーに荷物を預け、身軽になった私達は意気揚々と駅の外へ出た。
…と言うと格好いいが、方向音痴の私は人波を必死で避けながら、姉さんの後ろを小鴨のようについて行くだけだった。
こんな所で住めないわー。無理無理。
私は田舎で十分やし。
姉さんが申し込んでいたのは、都内各所を“バスに乗ったまま”巡る周遊コース。
久し振りに姉さんと一緒だし、何たって、ひっつき虫イソギンチャクの大きな荷物がいない。
ストレスフリーでめっちゃ楽しかった。
ランチは有名ホテルのバイキング。
あれもこれもと欲張り過ぎて、スカートのホックをそっと外したのはご愛敬だ。
数時間を満喫してバスを降りると、今日のメインの歌舞伎座に向かう。
初めて尽くしで館内に入る前からドキドキだ。
『ニッポンっていいな』
テレビ番組か何かの台詞が頭をよぎる。
もう感動!感動の嵐、いや台風が吹きまくっていた。
「はあっ……すっごい楽しかったぁ!
姉さん、めっちゃ張り込んでお金大丈夫なん?
全部出してもらうなんて、義兄さんにきがねなん やけど。」
「あははっ。なーに遠慮しとれんて。アンタらしくない。
『キャンセル料払うくらいなら加奈ちゃんに喜んでもらえ』って。
なぁ、うちのダンナ最高やろ!?
だから、大丈夫ねんて!心配なんかせんこっちゃ !」
「そうねんて!義兄さんは理屈な 人やさかい。
そういうことなら喜んで!甘えるしヨロシク!」
「さ、ホテル行こうか。」
できた姉にはできたダンナが付いてくるのかもしれない。
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