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上京(7)
「うわぁ…がんこな ホテル…」
「加奈子、ほら行くよ!」
お登りさんの私には気後れしそうな高級ホテルだった。
出張慣れ、旅慣れしている姉さんにとってはどうってことないんだろうけど。
それでも精一杯慣れてる風を装いチェックインを済ませ、部屋に辿りついてホッとした。
「うわぁ…綺麗…」
ホテルあるある。窓の外を眺めると、見下ろす街の煌めきに胸が躍る。
そんな私をよそに姉さんは
「加奈子、ベッドどっちがいい?」
「えー、どっちでもいいよー。」
「じゃあ私奥に行くね。
洋服、ハンガーに掛けとこぉーっと。」
スリッパに履き替えた姉さんは、手早く自分の荷物を広げて寛ぐ準備を始めている。
「晩ご飯はここのレストランの和食やよ。
滅多に来れんし楽しみにしとってや。」
「ほんなら私も早よぉ片付けしんなん。
姉さんは相変わらず手早いねんて。やっぱ敵わんわ。」
「なーに言うとれんて。
あっ、パパに電話しとかんなん!」
そう言うと、いそいそと電話をし始めた。
……私とじゃなく、やっぱり義兄さんと一緒に来たかったんやろな。
私でごめんね、ごめんねー。
「加奈子にヨロシクって言ってたよ。
アンタ電話しんでもいいが ?」
「うーん…グチグチ文句言われるの面倒やし…明日でいいわ。弘毅のとこから掛ける。
姉さん、いいじ 。物わかりのいいダンナで。」
「あははっ、仕方ないやん。アンタが選んだ人やん?
みんなの反対押し切って結婚したんやんか。
今更文句言われへんで。」
「…それ言われたら何も言えんわ…」
「ほーやろ ?ほんなら文句言わんこっちゃ。
さ、準備できたら行こうか。」
それ以上愚痴も言えず……姉さんに倣って取り敢えず荷物を広げ始めた。
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