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上京(8)
落ち着いて上品な店内。
目にも美しい料理の数々。
美味しくて頬が落ちそうなくらい。
何て幸せなんだろう。
満腹のお腹を気にしながら部屋に戻り、これまた生活感のないバスルームでまったりと過ごし…近くのコンビニで買った缶チューハイを(一応)グラスに移して、2人で飲んでいる。
「はあっ……日常から解き放たれるってこういうことを言うんやね…バスオイル?のお陰でお肌もツルッツル!
ここでワインじゃなくて、コンビニの缶チューハイってのが私達らしいんだけど。
そこは高級感なかったわ…
来れなくなった義兄さんには悪いけど、感謝しんなんわー。
姉さん、本当にあんやと。」
「久し振りに2人でおれる なんて、私も嬉しいんやって!
繁さんにはかわいそうなことしたかもしれんけど。
まぁ、ちょっとは嫁離れしてもらわんと、定年後が大変やよ。
四六時中側におってみぃ?自分の自由な時間なんてなくなるんよ!?」
「…それ考えたらゾッとする…」
「ほーやろ ?
今更かもしれんけど、ちゃんと躾しとかんと。
でもまぁ、それだけ愛されてるって思えば…ねぇ?」
「うぇっ…この年で、そんな…」
「なーに言うとれんて!枯れたらいかん !
うちなんて今でもラブラブやよ!道でだーれもおらんかったら手ぇ繋ぐし。ふふっ。
あの人はまだ仕事行っとるし、趣味も持っとるし、適度な距離を保ちつつ仲良く年金暮らしするつもり。
どうせ子供らは巣立って行くんやし、2人で最後まで楽しく暮らさんと。
いつまでも子供に依存したらアカン。
子供には子供の幸せがあるんやさけぇ。
本当に好きな人と結ばれるんやったら、応援してやらんと。」
「…ひょっとして、千秋ちゃんのお相手、何かある人?」
「ふふっ。昔、若い頃相当ヤンチャしたらしいで。族の頭 や、って言うとったな。
そこそこ名の通った人やったみたい。
ガタイもデカいし声も野太いし、最初連れて来た時は、流石にうちのパパもビビっとったわ。」
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