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上京(9)
「それでも許したん?」
「うん。話してみたらいい人でな。
今はちゃんと真面目に働いとって
『どんなことがあっても絶対に千秋に不自由はさせませんっ!』
って、大きな身体を丸めて土下座するんよ。
なーんか、手負いの熊みたいで…
おまけに、通帳やら印鑑やら、挙句にキャッシュカードまで出してきて
『ご心配なら、お義父さん達に預貯金全てお預けします。生活費の管理もして下さっても構いません。』
やて。
元不良も振り切れたらこんなになるんや…って感動してたわ。
何よりも、千秋のことを本当に愛して大切にしてくれる、それが一番の決め手やってんて。
相手のご両親も千秋のこと気に入ってくれててかわいがってくれとるそうやし。」
「そうやったん…」
「そういうことやし、結婚式には来てや!
家族みんなで…勝義達にも来てほしいんよ。
交通費やら宿泊代なんかはうちで出すから心配せんとって!
親戚一同集まる機会なんて滅多にないんやし。
明日弘毅にも言わんなんわ。」
「勿論!喜んで出席させてもらう!
あ、それまでに2、3キロ痩せとかんなん!」
「あー!そうやった!
留袖着んなんのやった…ヤバいヤバい。
仕事辞めてうちに居るとカロリー消費が減っとるんやってねー。
年で代謝も落ちとるし。あははっ。」
「…そっか…うちもそろそろ考えんなん…
実はね、ずっと仲良くしとる近所のママ友の息子さんが結婚したんやけど……」
「うん。」
「男の子と結婚して…同性婚ってやつ?
養子って形を取ったんやって。
それ聞いて『もしうちの誰かがそうなったら許せるかな』って考えとったんよ。」
「うん。で?」
「……結論出んかった……」
「そう……もし…もしそうなったとしても…ちゃんと話は聞いてあげんなんわ。」
「そうやね。」
「なんたって肝っ玉かーちゃんやから!」
思わず吹き出した。
飲みながら話し込んでて、丁度日付も変わる頃合いで、続きはまた明日、と休むことにした。
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