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上京(10)

「姉さん、おはよう!」 「おはよー。なぁ、私イビキかいとらんかった? 最近起きたら口の中渇いとることがあって、パパに聞いたら『イビキかいとったぞ!』って言われてんて。」 「夕べは別に気にならんかったけど。 やーだ。無呼吸症候群!? 一回病院行ったほうがいいんじゃないん?」 「うーん。何か病名告げられたら嫌ねんて。」 「そんなこと言うとらんと、ちゃんと診てもらわんかいね。 それでなくっても体調悪かってんろ? 姉さん倒れでもしたら、義兄さんが大変ねんよ! 自分のこと、もうちょっこし(少し)考えよ!」 「はぁ…加奈子に怒られるとは思わんかった… 帰ったら覚悟決めて行ってこんなんか…」 「いつまでも元気やと思うたらいかん。 それなりに年取っとるんやし。 まぁ、私も人のこと言えんけどな。」 そうやってお互いの身体のことを話したばかりなのに、朝食のバイキングはしっかりと何度も往復して鱈腹食べた。 「…学習能力ないな…こうやってカロリーが蓄積されていくんよ…」 「今日はええやん! せっかく東京来たんやし! 明日から、そう明日からダイエットする!」 あはははっ 「なぁ、弘毅のとこまでどうやって行くん? 電車?」 「うん。一応調べてんけど…ここからひと駅みたいねんて。 何かお昼ご飯作ってくれとるらしい。 あの子も一人暮らしが長いさけぇ、自分で何でもするみたい。」 「ほうか(そうなの)。ほんなら心配いらんやん。 で?アパート?マンション?」 「えーっと…これ。」 「はぁ、何やらご立派そうな名前やね。 えっ、35階!? なぁ、弘毅って就職したばっかやろ? 何でこんな高層階に住めるん?家賃どうしとるん?どんな高給取りねんて。 ひょっとして誰かと一緒に住んどるんけ?」 「…引越した、って言ってたけど…」 姉さんに言われて初めて気付いた。

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