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対峙(2)

まさか。 まさかまさか。 まさかと思うけどまさか。 このひとは弘毅の恋人だ。 それも相当愛し合っとる。どっちも本気や。 母親の勘を舐めたらアカン。 絶対にそうやわ。 「あの…うちの弘毅と一体どういうご関係なんでしょうか。 まさかとは思いますが……」 それに対して赤石さんが口を開きかけたのを弘毅が制した。 「母さん、おばさん。 達也さんは俺の部署の部長。 俺が押し掛けて一緒に暮らしてる。 単刀直入に言います! 俺はこの赤石達也さんと結婚を前提にお付き合いしています! 達也さん以外は考えられない。 将来的には彼の家の籍に入れてもらいます。 だからどうか許して下さいっ!」 口がパカッと開いた。 一瞬呼吸を忘れた。 鳩が豆鉄砲を喰らう。ハトマメ。 衝撃過ぎて頭が真っ白になる。 くわーっと、頭に気が上ってきた。思わず立ち上がり食ってかかる。 「……ちょっと…アンタ何言うとるんか分かっとるん? 弘毅は男。 そっちの赤石さんも、どう見たって男。 それを許せって……こんのだらぶち(このバカ)がっ! 自分で何言うとるんか、分かっとるんかいね! お母さん、こんなことのためにアンタを育ててきたんやないで! ちょっと赤石さん! 弘毅を誑かして何しとるん?何がしたいん? 今すぐ弘毅と別れてっ! 弘毅、アンタうちに戻りまっし! いや、絶対に連れて帰るっ!」 「加奈子、落ち着いて。」 「姉さん、これが落ち着いてられる!? 弘毅絶対にこの人に騙されとるんよ!?」 「とにかく座りまっし。血圧上がるで。 救急車呼ばんなんことになったら、そっちの方が面倒やさかいに。 弘毅、アンタもどストレート過ぎる。 順序立てて話せんと。 加奈子も弘毅もいらん事言わんと、ちょっこし黙っとき。 ホント親子そっくりやわ。 ところで赤石さん。」 「はい。」 「今弘毅が言ったことは本当ですか?」 姉さんの冷静な話し方に、少しずつ頭が冷えてきた。

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