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対峙(3)
居住まいを正した『彼』赤石さんは、しゃんと私達をしっかりを見つめて話し始めた。
「はい、本当です。
最初は私だけの心に秘めていました。
弘毅君が誰かと結婚する時には祝福して送り出そう、きっぱりと諦めようと思っていました。
ところがお互いに同じ思いでいたことが分かり、今はこうして一緒に暮らしています。
私の一生を掛けて彼を大切にします。
何があっても2人でなら乗り越えていける、そう信じています。
それから」
私達の目の前に封書を差し出してきた。
「何処の馬の骨とも分からないとお思いでしょうから、履歴書と身上書を用意しました。
よろしければご覧下さい。
それと、これは私個人の財産目録とその関係書類一式です。
万が一私に何かあっても、弘毅君に不自由な生活はさせません。」
姉さんは頷くと身上書を手に取った。
横から覗き込むと、彼の性格を表すようながっしりとした、それでいて丁寧な文字が並んでいた。
この人の学歴も職歴も凄い。
それはそうなんだけど、滲み出る存在感といい、それでいて圧迫感のない人だ。
仕事もプライベートもしっかりした人なんだろう。
こんな凄い人がどうして弘毅を選んだんだろうか。
所謂イケメンスパダリっていう部類のはずで、そこら辺の女なんか選り取り見取りだろうに。
身上書、履歴書、そして財産目録と目を通していく。
私達を騙そうなんて気持ちは微塵も見当たらない。
それはこの人の目を見れば分かる。
真っ直ぐな瞳。
そしてそれが弘毅を見る時には、蕩けそうな優しい光を宿しているのも。
弘毅も。
彼を見る時に、私達には見せたことのない顔つきになっている。
無理矢理別れさせるか、認めるか。
不意に早苗さんのことを思い出した。
あぁ…早苗さんもこんな気持ちだったんだ。
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