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対峙(4)
全てを見終わった後、丁寧に元通りに折り畳みテーブルに並べて返し、姉さんが切り出した。
「赤石さん、ご丁寧にありがとうございました。」
「いいえ。」
「どうして弘毅なんですか?
あなたみたいに完璧な男性なら、それに見合う女性がいるでしょうに。
元々そうだったの?
それとも弘毅と出会ってから?
お付き合いした男性 はいたの?
ぶっちゃけ聞くけど気を悪くしないでね。」
そうそう!私もそれを聞きたかったの!
「元々…ではないですね。
ただ、そういう事に関して偏見のない家でしたので、拒絶とか忌み嫌うという感情はありませんでした。
私は今、人事部にいますが入社時は営業部にいました。
このまま海外勤務をと夢見て頑張っていましたが、私の思いとは全く関係なく色恋沙汰に巻き込まれる事態になり、その頃から『女性とは恋愛関係は無理だ』と思うようになりました。
本気で付き合うような関係のひとはいませんでした。
一生独身でもいいと覚悟していた時に、弘毅君と出会ったんです。
彼の笑顔と心配りそして思いやりに惚れました。それだけではない。惚れた所を言えと言われたら幾つでも際限なく言えます。
昨今認められてきたとはいえ、同性同士というのは世間の風当たりはまだ強いでしょう
でも、彼と一緒ならどんなことでも乗り越えていける。彼の笑顔を守るためなら何でもできる。
彼を見ていると、家族にそして周囲の人達に大切にされてきたんだということが分かります。
そんな彼を私のものにしていいのか、随分と私なりに悩みました。
でも、ご家族の反対があってもそれ以上に彼を幸せにする自信があります。
ですからどうか…どうか私達のことを認めて下さい。
弘毅君を…私に下さい!
どうかどうかよろしくお願いいたしますっ。」
そう言うなり、赤石さんは床に平伏して土下座してきた。
ほぼ同時に弘毅も。
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