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対峙(7)

姉さんが……この子達のこと、認めた…… 「加奈子は?アンタはどうなん? この子らのこんな思いや姿を見ても反対するんか? 弘毅がどうしたら幸せになるんか、考えてみぃ? 誰とその生涯を共にするんか、何が、どうすることが、弘毅が幸せになるんか。 人それぞれ幸せの基準も価値も違うんよ。 …もし無理矢理引き離したら、羽根を引き千切られた小鳥みたいに飛べなくなって…弘毅はおかしくなってしまうやろな…」 姉さんは最後の方はひとり言のように呟いた。 私は目の前に座る2人を見た。 涙目の弘毅と、赤石さんは背筋を伸ばして真っ直ぐに私を見つめている。 早苗さんの言葉が、不意に脳裏に浮かんだ。 『大丈夫よ、母親だもん』 『母は強し、よ!』 そうだ!弘毅を守るのは私の役目だ! 弘毅が幸せになるには……… 「……赤石さん…生涯この子ひとりを大切に思い続けると約束してくれますか? どんな障害があっても、この子を必ず守ると約束してくれますか?」 「はいっ!命にかえても、弘毅君を思い続け愛し守ると誓いますっ!」 「弘毅、後悔せんのやね?」 「絶対に、絶対に後悔なんかしないっ!」 「赤石さん、ウチの旦那(ひと)は一筋縄ではいきません。 弘毅を貰いに来る時は覚悟して下さい。 でも…… 援護射撃はできるわよ。」 「ありがとうございますっ!」 赤石さんがソファーから飛び降りるようにして土下座した。 弘毅もそれに倣って頭を下げた。 …赤石さんの肩が震えている。 嗚咽の声も微かに聞こえてきた。 ラグに伏せた赤石さんの大きな手に、ぼろぼろ涙を零す弘毅がそっと自分の手を重ねた。 それに気付いた彼が、弘毅の手をそっと包むようにもう片方の手を重ねた。 あぁ…こんなにも、こんなにもお互いを思い合ってるんやね。 その姿に、素直に“美しい”と思えた。 「加奈子、はい。」 真っ赤な目をした姉さんがティッシュを渡してきた。 私、泣いとったんや…… 「姉さん、あんやと。」

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