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対峙(8)

そこにいた皆んなが泣いていた。 男泣きに泣いていた赤石さんが涙声で 「本当に、本当にありがとうございます。 覚悟して参りますので、近いうちにご自宅にご挨拶に伺わせて下さい。 私は何を言われても受け入れてもらえなくても何度でも足を運ばせていただきます。 どうぞお力をお貸し下さい。 よろしくお願いいたします。」 「…分かりました。 でも、本当に覚悟して来て下さいね。 ……お待ちしています。」 「はい!ありがとうございます。」 「母さん、おばさん、ありがとう…」 「私はなーんもしとらんよ。 はぁ、なーんやお通夜みたいやん。 なぁ、お腹空かん? お昼どっか食べに行こう!朝から押しかけたから、弘毅なーんも準備しとらんやろ? 私が奢るさかいに。」 「いえ、それは私が」 「何言うとらいね(言ってるの)! おばちゃんの言うことは聞きまっし! 赤石さん、個室のある何ぞ美味しいとこ案内してや。 さ、行くよ!」 「姉さん、私フレンチ食べたい。」 「何やの、加奈子。図々しいのん復活やん! 赤石さん、弘毅。 そういうリクエストやし、フレンチの美味しいとこ、ちょっこし頼〜ん(頼む)わ。」 赤石さんの運転で(車も高級車だった。私でも分かる)お洒落な造りのレストランに連れて行ってもらった。 「…なぁ、姉さん…何やら高級感満載なんやけど。 ここドレスコードとかあるん? こんな格好で来てしもうたけどええん?」 「大丈夫や。Gパンじゃないし。 ディナーじゃないからそこまでがんこじゃないわいね。 それに一応私らお洒落して来とるさかいにな。 赤石さんもそんなことはちゃーんと分かっとるわいね。 心配せんこっちゃ。」 4人ともまだ少し目が赤い。 通されたのは、ベージュがベースの落ち着いた個室だった。

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