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対峙(10)

赤石さんと弘毅は顔を見合わせ頷いた。 「先日、両親が突然我が家に乱入してきまして…その時にを紹介しました。」 「で!?」 「大歓迎で、は揉みくちゃにされてましたね。」 「お義父さんもお義母さんも、凄く優しくって大らかで、物凄くかわいがってくれるんだ。」 緊張が解れたのか、赤石さんは『弘毅』と呼び捨てになってる…名前を呼ばれるだけで頬を染める弘毅に、『乙女かよ!』とツッコミを入れそうになった。 「そう…じゃあ、赤石さんちは何の問題もないのね。 となると、やっぱり難関は繁さんか……加奈子、どうする?」 「そうやね…昨日言ってた早苗さん()に協力してもらわんなん…」 「早苗さん家、って?貴君()?」 「そう。早苗さん家の貴君、結婚したんよ…男の子と。貴君家の養子、って形にしたみたい。 そんでこの間お祝い持って行った時に、何やら男親同士で話し込んどってね。 あそこん家もうちと同じで、お父さん“結構な人”やから…物凄い大反対やったんやって。 知識としては頭に入っとるはずやから、卒倒することはないと思うんやけど……赤石さん、あなたに対して無礼な態度に出るかもしれんわ。 そうなっても…大丈夫?」 「勿論です! 当たって砕け散っても、塩を撒かれても水を掛けられても、何度でも挑みます!」 「あははっ、頼もしいわぁ。私も援護射撃しに行こうかな。 さ、とにかく乾杯しようや。 はい、みんなグラス持って…かんぱ〜い!」 酔ってしまって、これが夢だと思いたかった。 けれど目の前で弘毅に微笑む赤石さんは消えなかった。 現実なんだ。 弘毅の相手は、誰が見ても立派過ぎる成人男性。 ワインも食事も美味しかった。 お腹は満足しても、心が満たされない自分がいた。

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