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対峙(11)

「赤石さん、弘毅。御馳走様でした。 本当に美味しかったわ。お友達のオーナーさんにもよろしく伝えてね。 私ら行きたい所あるしここでサヨナラするわ。 明日も勝手に帰るから、見送りはいらんよ。 加奈子、ほんで(それで)いいよね?」 「うん、姉さんに任せる。」 「そういうことやし。 赤石さん、弘毅のこと呉々もよろしくお願いします。 繁さんをオトスのは大変かもしれんけど、私らも協力するから諦めんといて。」 「はい!ありがとうございます。 元より諦める気は更々ありませんから。 ご協力よろしくお願いします。」 「弘毅、身体には気を付けんなんよ。 赤石さん、どうかよろしくお願いしますね。」 「はい!また連絡させていただきます。」 「うん、母さんも。 おばさん、ありがとうございました。」 じゃあね、と手を振って別れた。 雑踏に紛れてしまうまで、赤石さんと弘毅の視線が追ってきていた。 「ふぅ…さぁて、何処行こうか。 あのまま一緒におってもアンタが辛いんかも、と思ぉて別れたけど、ほんで良かったんか? せっかくやしデパート行ってみようか。」 「姉さんには隠し事できんな。 そうなんよ。夢なら覚めて、って思っとったんやけど、現実やったわ。 弘毅の相手は立派な男性。 それも超イケメンでしっかりした優しいひと。 あのひとは、嘘をつくようなひとやない。 弘毅はきっと…幸せになれる。 そんでも、これから先のこと考えたらゾッとする。 ウチの人がどうするんか……怒り狂って暴れたら手ぇつけられんから。」 「挨拶に来る時には、私らも行くさけぇ心配しんとき。日にち分かったらすぐ教えてな。 はぁ…それにしてもイイ男やったなぁ… 弘毅、面食いなんやね。あははっ。」 「姉さん…洒落にならん。 認める、とは言うたもんの、何やら複雑やわ。」 「ほうやわいね(そうね)。吃驚したよね。 考えてもどんならん(どうしようもない)けど。」 人混みを避けながら姉さんに愚痴りつつ、デパートを目指した。

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