203 / 280
求め合う(1)
家に着くとシャワーを浴びる時間も惜しくて。それでも弘毅は、「一緒に入る」と言い張る俺を制して「少し時間を下さい」と恥ずかしそうに言ってバスルームへ消えていった。
そんなこと自分でやらなくても、一緒に入って俺がちゃんとヤってやるのに。
弘毅は『セーフティセックスのために』と、繋がる前の手間を惜しんだりしない。
スキンもつけるようにと、口を酸っぱくして言われるが、その頃には俺がぶっ飛んでしまっているから忘れることもある。
繋がりたいという気持ちが急いて、ついつい強引にしてしまうこともあるが、コテンパンに叱られる。
『バイ菌が入っちゃったらどうするんですか!?後で痛い思いをするのは達也さんなんですよ!』
その時は反省するのだが、愛らしい弘毅を目の前にすると……で、また叱られるのだ。
今日は何処か頭の芯が冷えていて、自分を抑える理性がまだ残っていた。
お母さん達の承諾を得てハイテンションになっているとはいえ、最難関の弘毅のお父さんのことが気になっているからだろう。
とか何とか言っても身体は正直だ。
さっきから痛いくらいに熱を持っている。少々シャワーの水を当てたくらいじゃ治まらない。
やっぱり俺が、と思いバスルームに向かおうと立ち上がったところへ、ドアが開いて弘毅がバスローブ姿で入ってきた。
「…お待たせしてすみません。あっ。」
弘毅の手を引いて抱き寄せた。
湯上りの弘毅はいい匂いがして、ほわほわと立ち上る湯気の残りがしっとりとして肌を包んでいる。
「弘毅……お父さんがどんなに反対されても、俺は絶対に諦めない。
何年かかっても、絶対に認めてもらう。
だから……離れないでくれ。」
「達也さん……」
弘毅が目を瞑り顔を少し上げた。
ともだちにシェアしよう!