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求め合う(8)
弘毅が、ふっと微笑んだ。
「た、つやさん、おれ、しあわせ、です」
「弘毅…」
弘毅は、息を乱しながらも精一杯俺に伝えようとしている。
俺は、汗に濡れた弘毅の髪の毛を掻き上げながら思いを巡らせていた。
俺の焦りを感じ取ったのだろうか。
『幸せ』だと…本当にそう思っているのか?
一目惚れだったんだ、マジで。
俺が半ば無理矢理こんな関係に持っていったというのに、お前は俺を受け入れてくれた。
何とかキッカケをと『弁当を作ってもらう』なんて姑息な手段を取ったにも関わらず、俺の体調を考えて毎日毎日届けてくれたな。
そして思いを寄せ合い身体を繋げて……
お前の2人の兄貴達、お母さん、おばさんに何とか理解を得て……難関のお父さんを残すのみ。
なぁ、弘毅。
俺、こんなに幸せでいいのかな。
生涯を共に歩む伴侶に巡り合えるなんて思ってもみなかった。
枯れた人生を覚悟していた俺に、鮮やかな絵具をパレット一杯に差し出してくれたお前が、愛おしくてならないよ。
弘毅、ずっとずっと俺を愛してくれるか?
女々しいと思うけれど、お前を失ったら俺は生きてはいけないんだ。
お前の瞳に俺だけを写してくれ。
頼む、弘毅頼む。
俺を……愛してくれ。
「達也さん?」
戸惑うような声音で名前を呼ばれ、優しく頬を拭われた。
「達也さん、何処か痛いんですか?大丈夫?」
最初、弘毅が何を言っているのか理解できなかった。
「いや、何処も」
「…涙が……」
「…俺、泣いてたのか?」
「はい。」
「…すまん、ちょっと思いが……」
「はい……心から愛してます、達也さん。
俺、ずっと側にいま、んっ」
弘毅、弘毅、弘毅
お前は最高の伴侶だ!
「やっ、奥、奥までっ」
更に熱量を増した俺自身が、ぐちゅぐちゅと音を立てて弘毅の中を責め立てる。
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