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求め合う(10)

はぁ、はぁ、はぁ、 酸素を取り込む呼吸だけが響く。 余りの気持ち良さに、弘毅の隣に倒れ込むように転がり、強く抱きしめた。 微かなボディソープの香りと共に、鼻腔に流れ込んでくる青臭い匂い。 腹に当たる粘着感。 荒い息。上下する胸。 どくどくと跳ねる鼓動。 じっとりと汗ばんだ肌が絡み付いている。 「弘毅…大丈夫か?」 はぁ、はぁ、はぁ… 弘毅はまだ息が整っていない。目を瞑り深呼吸を繰り返している。 目尻に涙が溜まっている。 無茶させたか。 あの感触は…最奥に届いたのではないだろうか。 俺だけが知っている場所に。 「弘毅……」 目元に唇を付けて涙を吸い上げると、弘毅は薄っすらと目を開けたが、また目を瞑ってしまった。 暫くすると規則正しい呼吸に変わり、どうやら気を失うように眠ってしまったようだった。 「抱き潰してしまったか…」 ごめんな、とキスをひとつ送り、ゆっくりと起き上がる。 下半身に残る甘い怠さと倦怠感を振り切るようにベッドから降りた。 振り返って見ると、弘毅はぐっすりと眠っている。 後始末をしてやらなきゃ。 俺は洗面器に熱いお湯を入れタオルを絞り、俺が汚した弘毅の身体をそっと拭き始めた。 まだ柔らかい後孔に指をつぷりと挿し入れると、白濁の液がごぷりと出てきた。 慌ててティッシュで(ぬぐ)い取る。 反省……負担をかけないようにできるだけスキンを装着しよう… 俺の匂いに包まれた愛おしい恋人。 目覚めたら風呂に入れてやろう。 尾骶骨にひとつだけキスマークを残してやった。 これを見つけたら何て言うだろう。 怒るだろうか、それとも拗ねるだろうか。 いや、顔を真っ赤にして俯くかもしれない。 あれこれと弘毅の反応に思いを巡らせながら、俺は足取り軽くバスルームへと向かった。

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