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難関突破!?(8)

怒鳴られるのも殴られるのも覚悟で、父さんの目を真っ直ぐに見て言い放った。 達也さんは頭を下げたまま、ぴくりとも動かない。 それを見て俺も同じように頭を下げた。 ……あれ? 怒鳴り声が聞こえない。机もひっくり返ったりしていない。 どうしたんだ? 父さん、吃驚し過ぎてぶっ倒れたんじゃ!? 恐る恐る少し顔を上げると、そこには片手で目を押さえ、肩を震わせる父さんの姿があった。 俺の方が吃驚した! 「…父さん?」 暫く無言。 漸く口を開いた父さんは 「お前達のこと、知ってたんだ。」 とぐすぐすと鼻を鳴らしながら涙声で言った。 「え?どうして?俺は何も言ってないけど。」 「取り敢えず、赤石さん、顔上げて下さい。 東京から帰ってきてから母さんの様子がおかしくてな。 義姉さんや勝義達とも頻繁に連絡を取り始めたし。これは何かある、と思って、母さんの携帯をこっそりと盗み見たんだ。 そしたら、お前達のことが…」 「そうだったんだ…」 「やだ、何!?ひとの携帯覗くなんて!」 「それは謝る。加奈子ごめん。 母さんに内緒にしてたんだが、興信所使って調べさせてもらった。 勝手に悪かったな。 …実際に東京にも行って、お前達の職場や家も見てきた。」 「興信所!?東京!?あなた、いつの間にっ!?」 「そんなの、何処にでもツテはあるし、どんだけでも日帰りできる。 信じたくなかったし信じられなかったけど、事実だった。 マンションに仲良く入っていくお前達がチラリと見えて、あとを追いかけたんだがオートロックに阻まれて…あぁ、うちの弘毅が…なんて絶望した。」 “絶望” 父さん、そう思ったんだ…… 「…でも、その時の弘毅の笑顔が、今まで見たことのないような幸せな顔で…俺は諦めて帰るしかなかったんだ。 それですぐにその足で飛んで帰って(ひで)を拉致して、貴ん時のことを聞いたんだ。」

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