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難関突破!(1)

「こんにちはー!」 満面笑顔のおじさんと、仕出し屋さんの配達がブッキングした。 どどん、と塗りのお膳が並べられた。 焼鯛付きの“見るからにお祝い膳”といった感じの豪勢なもの。 一体一人前幾らするんだろう。 こっそりと母さんに聞いてみた。 「…母さん…これ、幾らするの?大丈夫? 俺も出すから。」 「さあね。でも姉さんがスポンサーだから気にしなくていいのよ。 あとでお礼だけ言っときなさいね。 さぁ、飲むわよ!」 目の前で談笑する母さんと達也さん。 その母さんの隣で少し膨れっ面をした父さんは、お酌をしようとする達也さんを制して手酌でビールを飲んでいる。 大兄ちゃんと小兄ちゃん、おばさんは、合流したおじさんとご機嫌で酒を酌み交わしてした。 俺は…目の前で繰り広げられている場面が、何だか夢みたいで…ちまちまと箸を動かしていた。 突然、父さんに呼ばれた。 「弘毅。」 「はっ、はいっ。」 「本当に、本当にコイツでいいのか?コイツで。」 あー…ちょっと酔ってるな。 言い含めるように、ゆっくりと、はっきりと告げた。 「うん。俺、達也さんでないとダメなんだ。 本当に、本当に達也さんがいいんだ。」 「……そうか……」 父さんはひと言だけ返すと、またぐびぐびとビールを飲んだ。 その姿を見ていたら、何だか切なくなって。 思わず達也さんを見ると、視線が合って何も言わずに頷いてくれた。俺も頷き返した。 達也さんは父さんに向かって正座すると、改まって声を掛けた。 「お義父さん。」 「な、何だ!?」 「私達、結婚式を挙げたいと思ってます。 同性婚でも受け入れて心を込めた対応をしてくれる所があるんです。 日程は相談させていただきますので、皆さん是非出席していただきたいんです。」

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