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難関突破!(9)

隠す訳でもないけれど、密やかに幾度となく繰り返される俺達のそんなやり取りをおじさんはグラスを傾けながら黙って聞いていた。 「達也君。」 「はい。」 「君はもう俺達の大切な親族のひとりだ。 何か困ったことがあったら、遠慮なく頼りにしてほしい。 こう見えてもあちこちに顔がきくからね。 由美江さんもあんな性格だけど、情の深い優しいひとだから、色々と相談に乗ってくれる。 弘毅。」 「はい。」 「世間の風当たりはまだまだ強いかもしれないが、このご縁を大切にして、2人で支え合って達也君と幸せに。」 「ありがとうございますっ!」 「おじさん…ありがとう…」 目頭が熱くなる。 もう何度涙を流したんだろう。 枯れることのない塩っぱい水は、後から後から溢れてくる。 隣からそっと渡されたおしぼりで目元を押さえていると、おばさんの声がした。 「あら、やーだ。弘毅泣かしちゃったの誰? ほら!達也君、飲むわよぉ!」 「おばさん、もうちょっと上品にしてよ!」 「一応、ここホテルの高級ラウンジなんだからな! 俺達ここに泊まるの忘れんなよ!」 「あははっ、そうやったわ。失礼、失礼。 弘毅、あんたも泣いとらんと、飲みまっし(飲みなさい)! 勝義、次何飲む?」 「俺はもういいよ。二日酔いはゴメンだから。 すみませーん!お冷や下さーい!」 大兄ちゃんはおばさんを適当にあしらいつつ相手をしているようだった。 和やかに更けていく夜の帳に思いを馳せる。 父さんはまだ寝ているのだろうか。 それとも母さんに愚痴りながら一杯やってるのかな。 その頃、繁と加奈子はしんみりとビールを飲んでいた。 「本当にこれでいいんかな。 弘毅は本当に幸せになるんだろうか。 俺の選択は間違ってなかったんだろうか。」 「今更!? あの2人の姿を見たら、何も言うことないでしょ?妬かないの。 最後まで私があなたの面倒見てあげるから…」 「加奈子……」 「泣くな!」

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