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難関突破(10)

翌日、二日酔いで頭を抱えた大兄ちゃんと小兄ちゃん、そしてスッキリとした顔のおじさんとおばさんを駅で見送った。 「次に会うのは結婚式でね!」 青い顔の兄さん達とは対照的に、おばさん達は爽やかにホームのエレベーターに消えて行った。 「さ、俺達もそろそろ時間だな。」 「はい!」 その時 「弘毅!良かったぁ、間に合った!」 「母さん!?」 「姉さんにアンタ達の出発時間を聞いたんよ。 会えて良かったぁ! 達也さん、弘毅をよろしく頼みます。」 「はい!勿論です!」 「弘毅、これ。」 手渡された紙袋はずっしり重かった。 「帰ったらお昼に食べれるようにお弁当作ったんよ。 それと、あんたの好きなお饅頭も入ってるから。 父さん、大丈夫だから。心配せんといてな。」 「母さん……ありがとう。」 「身体に気ぃ付けて。 お式にはちゃんと父さんも行くから。 ……ほら、時間やろ?早ぉ行かんと。」 「お義母さん、ありがとうございます。 詳しいことはまた後程連絡します。」 「達也さん、わざわざ遠方まで足を運んでくれてありがとう。 どうか、弘毅のことかわいがってやって下さい。」 「はい、任せて下さい!」 「弘毅、ちゃんと達也さんの言うこと聞いて。 元気でね。」 頷く俺の視界が、またボヤけてきた。 母さんと握手を終えた達也さんに促され、後ろ髪を引かれるような思いで、その場を後にした。 「お義母さん、わざわざ作って届けて下さったんだな。 入れ違いにならなくて良かった。 帰ったらすぐにいただこう。楽しみだな。」 「…はい。」 紙袋の重みは母さんの愛情。 愛情過多な家族の思いを鬱陶しいと思って足が遠のいていたけれど…… 思わず声になって出ていた。 「母さん、ありがとう。」 ふと、手が軽くなった。 達也さんが紙袋を受け取って微笑んだ。

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