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挙式へ(2)

「実は、式場を紹介してくれたのも社長なんだ。」 「はぁ、社長が、ですか…」 「色々とリサーチ済みでね、こちらが聞きもしないのに嬉々として情報をくれるんだ。 俺達の式に出て、自分の時の参考にしようとしてる魂胆がバレバレなんだけど。 どうだ?出席してもらってもいいか?」 「俺は別にいいんですけど…でも一旦内々で、と決めちゃってるから、皆んなが何て言うか…」 「お義父さんに許可をいただこう。 電話するよ。」 達也さんはすぐ携帯をタップし始めた。 …何故か盛り上がってる。いつの間にそんなに仲良くなったんだろう。不思議だ。 「弘毅、お義父さんOKだ! おじさん達にもメッセ送っておくよ。」 素早い。やることが抜け目ない。 社長が来る!? どんな顔して会えばいいんだろう。 うーっ、困る。 「何百面相してるんだ?」 むにむにと頬を掴まれた。 「何も心配いらないから。 …もやもやしてること、あるか?」 「……いいえ。ただ……」 「ただ?」 「……俺、こんなに幸せでいいのかな、って。 何か大きな落とし穴でもあるんじゃないか、って。 それに社長にどんな顔して会えばいいのか…」 「弘毅。」 優しく名前を呼ばれ、そっと抱きしめられた。 「俺も幸せ過ぎて不安になることがある。 これ、夢だったんじゃないかって。」 「達也さんも!?」 「だってそうだろ? 想いを寄せていたお前と結ばれて、家族が認めてくれて、一生共にいられるんだ。 こんな嬉しいことはないよ。 怖いくらい幸せなんだ。 反動で何か起こるんじゃないかって心配で。 でも、弘毅。 これから、今以上に幸せになろう。 どんな困難が待ち受けていても、ぶっ飛ばして跳ね返すくらいに。 俺達ならそれができる。そうだろ?」 「達也さん……はい。」 「ん、いい子だ。」 瞳を合わせて見つめ合う。 そして、優しいキスが落ちてきた。

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