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挙式へ(6)

スキンケアだけではなくて、凝り固まっていた肩甲骨までしっかりとマッサージしてもらった。 『特別にリンパドレナージュもさせていただきますね。 日頃パソコンをお使いでしょう? 肩凝りも酷いはずですよ。』 俺の身体を触った途端、越村さんが押し付けがましくなく「追加料金は不要です」とそう言ってくれた。 あんなに身体がほぐれて気持ちいいものだとは思わなかった。 越村さんの優しい声と温かな手技に癒された。 心地よい身体の怠さを感じながら、俺も達也さんにできたらいいな、なんて思っていた。 「…様、若林様…」 「…ん…はっ、はい!わっ、すみません、俺寝ちゃってて。」 「ふふっ、いえいえ。そうしていただけて何よりです。 流石に赤石様がご自慢のお肌に、更に磨きがかかりましたよ。 どうぞ素敵なお式になりますように。」 「あ、ありがとうございます。」 達也さん、遥さんだけじゃなく、越村さんにまで……一体何人に自慢してるんだ!? 恥ずかしさで俯く俺に、越村さんが 「ご伴侶に愛される、ってお幸せですね。 ここにお見えの方は皆そうなんですけど。」 「そうなんですか?」 「ええ。 いろんな愛の形がありますし、私達はお客様がお幸せになるお手伝いをさせていただけることが嬉しいので。 そういうお姿を見ることができる、っていうのは仕事を超えた醍醐味ですね。 毎日愛のお裾分けをいただいている気分です。 ふふっ。」 「あの…俺達もそんな風に見えてますか?」 「ええ、勿論! 若林様、差し出がましいかもしれませんが…もっと自信をお持ちになって! あなた方は本当に素敵なカップルですよ。 長年ここに勤めてる私が申し上げるんです。 間違いありません! どうかそのまま、相手を思いやって歩んで下さいね。 どうぞお幸せに。」 「…はい、ありがとうございます…」 温かな言葉を掛けられて、不覚にも涙腺が緩んでしまった。

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