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挙式へ(7)

一旦納得した風に装いはしたものの、女性が当たり前のようにすることを自分が体験することに、少なからず拒否感が拭えない自分がいた。 心の何処かで『女性に劣る』『負けてる』と思う気持ちがあったんだろう。 きっと越村さんは、そんな俺の気持ちを汲み取って、身体の外に全て流してくれたんだと思う。 心も身体もすっきりと軽くなった俺は、越村さんと遥さんに、自分の正直な気持ちを伝えた上で丁寧にお礼を述べ、サロンを後にした。 バスの時間は何時だったかな。 確認しようと立ち止まった時、見慣れた車が横付けされた。 「弘毅!」 「達也さん!?お仕事は!?」 「ははっ、寺橋に丸投げしてきた。 ほら、乗って!」 助手席に滑り込むと、達也さんにガン見された。 「…弘毅…綺麗になったけど…何かあったのか?」 「えっ、別に。何もないです! 予約ありがとうございました。 物凄く気持ちよくて寝ちゃってました。」 「目が赤い。」 達也さんは、俺の返事には答えず、たったひと言そう言うとギアを入れて車を走らせた。 泣いたのがバレた。 遥さんと越村さんが気を遣って、目元も十分冷やしてくれたのに。 車内は無言。 ちら、と達也さんを見るが、真っ直ぐ前を向いてひと言も喋ってくれない。 また、じわりと涙の膜が張る。 ダメだ。俺、情緒不安定になってる。 マリッジブルー?男でもなるのか? 少し上を向いて、涙が溢れるのを必死で我慢していた。 そのままマンションに戻ると、ずっと手を繋がれて部屋に入った。 リビングでやっと手を離してから、上着を脱ぎネクタイを外し、ソファーに座った達也さんに手招きされる。 恐る恐る近付くと、同じように上着とネクタイを取られ、膝に乗せられ向かい合わされた。

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