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挙式へ(8)
達也さんは俺の頬をすっと撫でると
「良かれと思ってやったことだったが…無理強いだったか?
嫌な思いをさせたのなら謝る。すまない。」
俺は思いっ切り首を振ると
「違いますっ!そうじゃなくて…俺が、俺…」
情けないけれどまた泣きそうになってきた。
けれど、ちゃんと伝えなければ。
「俺が、勝手に自分と女性を比べて、勝手に卑屈になって、勝手にいじけていただけなんです!
でも、スタッフの越村さんに『もっと自信を持ちなさい。あなた方は本当に素敵なカップルです。』って言ってもらえて…だから、だから」
「弘毅、分かった。
もういいよ、だから泣くな。
お前の気持ち、考えてやれなくて悪かった。」
達也さんは俺の背中を摩りながら、ぎゅっと抱きしめてくれていた。
「…弘毅、イイ匂いがするな。」
「柑橘系のオイルだそうです。」
「…触っていいか?」
「……はい。」
Yシャツのボタンをゆっくり外され、下着を捲り上げられた。
するすると手の平全体で肌を撫でられる。
肌に触れる空気と官能的な手の動きに、ごく、と喉が鳴った。
「…しっとりと吸い付くのに滑らかだ…弘毅、磨き上げてもらったんだな…」
「…っ…はい、あなたのために……あっ」
達也さんが心臓の辺りに唇を寄せた。
じゅ、と音を立てて吸い付くと
「ダメだ。我慢できそうにない。
弘毅、一緒にシャワーを浴びるぞ。」
俺の返事も待たずに次々と服を脱がされ素っ裸にされて、問答無用で連れて行かれた。
嫌だと拒否しても、俺の後孔を解し(そのせいで甘い声を響かせてしまった)、丁寧に拭きあげると、すかさず寝室へ……
少し怠さを感じていた身体は、達也さんのせいで本格的な怠さへと変わり……
ぐっすり、と言うより、ぐったり、となって眠りの世界に落ちていったのだった。
教訓:煽る言葉は使わないようにしよう。
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