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挙式へ(10)
遥さんは俺達を繁々と眺め、何度も何度も頷くと
『最近こちらをご利用下さるお客様方は、みなさんモデルのようで…はぁ、何とも羨ましいですね。
まるでオーダーメイドのようにぴったりです。
若林様、よくお似合いです。』
と褒められて、その時は有頂天になっていた。
ところが今、2人で鏡の前に立つと…
「達也さん、俺だけ七五三みたいじゃないですか!?」
達也さんは本当にモデルみたいなのに、俺は…
「何言ってんだ!?よく似合ってるぞ。弘毅のキュートさが溢れて、ヤバい!
誰にも見せたくないから、俺はお前を今すぐ監禁したい。」
訳の分からないことを言って抱きしめてくる始末。
「達也さん、式服がシワになるっ!
ハグはダメーっ!」
バシバシ背中を叩くと、やっと離れてくれた。
その時
コンコン「失礼いたします、ご親族様ご到着です!」
助かったぁぁ…
すかさず達也さんから距離を取り、襟元をピッと引っ張って整えた。
少々不貞腐れ気味の達也さんがドアを開けると、双方の親族達が笑顔で勢揃いしていた。
そして1番後ろに…社長!?…ホントに来たんだ…
「おめでとう!うわー、すげぇ!」
「まぁ、達也さん、モデルみたい!
弘毅は?あらー、弘毅も素敵よぉ!」
「なぁ、写メ、写メ撮ろう!弘毅、こっちに来い!俺、待ち受けにする!」
「…とうとうこの日が来てしまったのか…」
「お父さん、観念してっ!」
「いやいや、賑やかでいいですね。」
「うちの愚息がこんなかわいい子を連れてくるとは…」
「赤石、若林、おめでとう!」
俺達は半ばもみくちゃになりながら、同時進行で放たれる祝福の洪水にまみれていた。
どの顔も、笑顔、笑顔…いや、父さんだけは少しブルーだ。
そんな状態のまま、挙式に雪崩れ込んだ。
センチになるとか緊張するとか、そんな気持ちには全くならなかった。
達也さんが笑う。
「俺達らしくていいかもな。弘毅、先に行って待ってる。
お義父さん、お願いいたします。」
そして俺の手を父さんにそっと託した。
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