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挙式へ(12)
メンデルスゾーンの結婚行進曲のファンファーレが高らかに鳴り響いた。
いかにも、という感は否めなかったが、流行りの曲よりも定番のクラッシックがいい、と2人の意見が一致してこの曲を選んだのだった。
観音開きの重厚なドアが開いた。
心臓が飛び出しそうなくらいに緊張している。
一瞬、色とりどりのステンドグラスの淡い光が差し込んで、達也さんに大きな天使の翼のようなものが見えた気がした。
俺の目がおかしくなったのだろうか。
いや、2人で歩むこれから先の人生を祝福で満たされた、素直にそう思えた。
父さんと一緒に、ゆっくりとゆっくりと達也さんに近付いていく。
祭壇で待つ彼はゆったりと微笑んでいた。
そこからは殆ど記憶がない。
覚えているのは、握りしめられた父さんの手の強さと、俺を受け入れた達也さんの優しくて力強い眼差しと手の温もり…そっと目元を拭った父さんの横顔……
そして口々にあがる
『おめでとう!』
『幸せになれよ!』
『次は俺だぁー!』
という祝福(!?)の言霊達……
歓声と笑顔が迎える中、俺は笑っていたのだろうか。
それとも泣いていたのだろうか。
ただ言えるのは、俺の手を握りしめて離さない、生涯の伴侶の存在をずっと感じていた、ということ。
俺は愛されている。
愛されてきた。
愛情は繋がれていく。
雲ひとつない空に、鳥達が羽ばたいていく。
「弘毅、俺達はもっと幸せになっていくよ。」
達也さんが微笑みながら耳打ちした。
頷く俺に、満足気な達也さんの腕が絡み付いた、と思う間もなく身体が宙に浮いていた。
「!?」
俺を横抱きにして、赤い薔薇の花びらが舞い踊る中を進む。
一際大きな歓声があがり、ドヤ顔の達也さんと茹で蛸のようになった俺は、フラッシュを浴びていたのだった。
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