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かわいい秘密(1)

遥さんはにこやかに 「本日は誠におめでとうございました。 本当に素敵な温かなお式になりましたね。 皆様笑顔でお帰りになって…本当に良かったです。」 「こちらこそありがとうございました。本当にお世話になりました。 式もさることながら、お料理が相当美味しかったと喜んでいました。」 「それは良かった。 ありがとうございます。シェフの励みになります。申し伝えておきますね。 お呼び立てしたのは…これをお渡ししたくて…どうぞ。」 そう言いながら差し出されたのは、厚みのない白いパッケージだった。 お揃いの白いリボンが付いている。 「え?俺にですか?ありがとうございます。」 受け取りはしたものの、軽いそれが何なのか分からなかった。 俺はきっと怪訝な顔をしていたのだろう、遥さんは優しく言った。 「実はですね。私から個人的に挙式を終えた“夫様(おくさま)”に、お渡ししているんです。 よろしければ今夜、お使いになってみて下さい。 旦那様がことのほかお喜びになられるそうで、ご好評いただいているんですよ。」 「あ、そうなんですね。 わざわざありがとうございます。 “喜ぶ”って、一体……」 「ふふっ、それはご自身でどうぞご確認を…また感想等お聞かせ下さいね。 あ、ご主人様がお済みのようです。 弘毅様、どうぞ末長くお幸せに。」 「ありがとうございます。 では……」 悪戯っぽい笑顔の遥さんに再び事務室へと案内され、スタッフさん達総出で見送られた。 照れる。 どうしていいか分からない。 取り敢えずお辞儀をして手を振り、式場を後にした。 助手席のシートに身体を(うず)めた途端に、疲れがドッと出てきた。 思わず漏れたため息に、達也さんが 「弘毅、気を張ってたんだろ。もう大丈夫だ。」 と頭を撫でてくれた。

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