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かわいい秘密(3)
「達也さん、ここ……」
「中々いいだろ?」
「“中々”ってもんじゃないですよ!
俺なんか絶対に手が出ない五つ星じゃないですか!
俺なんかのために…そんな…」
「弘毅、今日は何の日か分かってるよな?
『俺なんか』って言うな。
弘毅だから。お前のためだけに準備したんだ。
俺達の門出にぴったりだろ?
だから『ありがとう』ってキスしてくれたら俺はそれだけで嬉しい。」
「達也さん…『俺のためにありがとうございます』
…でもキスは、ここではちょっと…」
「ふっ、分かってるよ。
後でたっぷりといただくからな。」
「“たっぷり”って…そんな…」
いつもの濃厚なキスを思い出して、身体がカッと熱くなる。
耳まで赤く染めた俺を見て、達也さんは満足気に頷き、くっ、と喉を鳴らすと、車を横付けた。
あれ?駐車場に入れないの?
不思議そうな顔をする俺に降りるよう促し、スーツケースを取り出した達也さんは「よろしく頼むね。」とスタッフに声を掛けている。
「バレーサービスと言ってな、入出庫を全て任せるシステムなんだ。」
「はぁ…それだけでも高級感が凄いですね。」
「さ、こっちだ。」
くすくす笑いながら先導する達也さんの後を追い、チェックインをする後ろ姿を見つめていた。
うん、カッコいい。顔が見えなくてもカッコいい。
俺の達也さんは最強だ!…って誰に自慢してるんだ!?
「弘毅、そんな色っぽい顔するな。
我慢できなくなる。」
突然耳元で囁かれて慌てた。
「そ、そんな顔なんてしてませんっ!」
「いーや。他の誰にも見せたくないから、早く行くぞ。」
達也さんは、さり気なく腰を抱いてエレベーターに向かう。
何で腰に手を回してんの!?
フロントのスタッフや他の宿泊客なんかもいるんだよ!?
万が一知ってる人がいたらどーすんの!?
軽いパニックを起こしている俺を無視して、達也さんは堂々とエレベーターに乗り込んだ。
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