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幸せのステップ(1)

無事に挙式し新婚初夜も済ませた俺達は、翌週の月曜日から通常業務に戻った。 寺橋係長が満面の笑みで迎えてくれた。 「若林君、おめでとう! おっ、薬指にも所有の証…独占欲の強いアイツらしいね。 今から出社してくる女性陣に質問攻めに合うことを覚悟しとかなくちゃ!」 「…どうしようか迷ったんですけど…やっぱりちゃんとつけていたくて。」 「うんうん。それはよく分かる。 ね!?」 係長はそう言って、左手をひらひらさせた。 その薬指には美しい煌めきを放つ銀の輪っかがあった。 『指につけるまでに色んな葛藤があったんだ』って教えてくれたことがあった。 そういうものを全部引っくるめて、2人で超えてきたんですね。 俺達も…そうありたいです。 係長の手を見つめていたら 「ん?どうかした?」 って微笑まれた。 やっぱり美人だ、このひと。 「えっ、いいえ! お幸せそうでいいな、って。」 「あはっ。君達には敵わないよ、新婚さん!」 「係長っ!」 あははっ、とデスクに向かう足は何となくご機嫌に見えた。 はぁ、と大きく息を吐いた途端に、ドヤドヤと入ってきたのは…スピーカー、いや訂正、ムードメーカーの岡田さんと、酒井さん。 「おはようございまーす! あ、若林君、机拭きは今日私達でするか…あら? ねぇねぇ、ソレ、ひょっとして……」 彼女の目が俺の左手をロックオンした。 ゲッ こっちに来るっ! ツカツカと俺の前に立ちはだかると、左手を掴まれた。 「あああーーーーーっ!!! やっだぁーーっ!!! 若林君、コレどーしたのっ!?」 突然手を掴まれ、俺はその場でフリーズしていた。 至近距離で叫ばれて、耳がキンキンしている。 吃驚して立ち上がった係長の椅子が、ガタンと音を立てて倒れた。

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