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幸せのステップ(3)
「1週間!?
そんなに続くんですか!?嘘でしょ!?」
「若林君、気の毒だが…チラチラ見られながらコソコソされたり、面と向かって色々言われたりするけど…我慢していれば、すぐに終わる。
頑張れ。」
係長が棒読みで言った。
「酒井さんのお店をまた貸し切ろうとしてるんですっ!
阻止しないと、バレたら大変なことになりますっ!
達也さん、どうしたら」
「『ぶ・ちょ・う』
若林君、ここでは気を付けるように。
心配するな。
ありがたいことに、今月は山のように仕事があるんだ。
彼女達はまだ知らないけどな。
まぁ、飲んで美味しいもの食べて絡んで騒ぎたいだけだから、女性陣だけで行ってもらうとしよう。
寺橋、上手く誘導してくれる?」
「はい、喜んでー。
スポンサーは勿論部長ですよね?
それ確認しておかないと、あとで俺が吊し上げられますからね。」
「任せとけ。頼んだよ。
若林君…後で…ゆっくりな。」
「はっ、はいっ!?(ん、後で?何?)」
部長と寺橋さんの肩が震える理由が思い浮かばず、首を傾げていた俺に、寺橋さんがプルプルしながら
「…若林君…君って……ははっ。鈍い!
『家に帰ってからの夜のお楽しみ』
ってことだよぉ〜!
愛されてるねぇ。いよっ、新婚さん!」
そこまで言われて、流石の俺もやっと分かった。
「部長っ!係長っ!」
「あははっ。怒る若林君もかわいいなぁ。
これじゃあ部長もメロメロだよね。
…おっと…あちらから鋭い眼光が…
さてと、仕事、仕事。
今日も一日頑張りましょう!」
係長の揶揄いに顔を真っ赤にしながら、ちろ、と達也さんを見ると、俺を見つめて笑っている。
魔王の微笑みに、きゅん、とときめいてしまう。心臓に悪い。
これから先の1週間を覚悟して乗り切ろうと、俺もとびっきりの笑顔を返して書類を引っ張り出した。
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