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幸せのステップ(4)
「……という訳でね、“若林君のお祝い”という名の食事会は女性陣だけで行ってくれないかな?」
「えーーーっ!?そんなぁ…皆んな楽しみにしてるんですよぉ〜!?
だって私達がお祝いしないで、一体誰が」
「はい、ストップ。
聡明なあなたなら、この仕事の量分かるよね?
それを差し置いてまで自分のことに気を遣われたら、あの若林君のことだ、『申し訳ない』って気持ちが仕事にも影響するよ?
彼にそんな思いをさせたくないんだ。
それにさ、部長から伝言。
『俺達の代わりに、女性陣だけで楽しんで来てくれ。』
はい、これ預かったから。」
「え?」
「君達の飲食代。多分十分足りる。二次会も行けると思うよ。
赤石部長の下で良かったねぇ。こんな上司、滅多にいないよ?
後でお礼言っといてね。」
「…………」
「お祝いしたい、っていう気持ちもよく分かるんだよ。
皆んな若林君のことがかわいくて仕方ないもんね。
でも、若林君自身が『身内で済ませたからお構いなく』って固辞してるし、仕事もこんな感じだ。
今更お店のキャンセルも迷惑が掛かるだろ?
部長のご好意も受け取って、俺達の分も楽しんできてよ。ね?」
「…分かりました。
先走って申し訳ありませんでした。
部長には皆んなでお礼を言います。」
「うんうん、そうして。
それと、本人が話したくないことは無理矢理聞いたり、邪推しないであげてね。
恋バナの噂は皆んな大好きだからさ。
もし、他の部署の人達が何か言ってきても、君達は守ってあげて。
彼は俺達の大切な仲間の一人だから。」
「はい!
係長、やっぱりお優しいんですね。」
「ははっ。今まで何だと思ってたの?」
「うーん……『影の支配者』…」
「うはっ、知らなかった……」
「あ、因みに部長は『魔王』です。
あ、いっけなーい!バラしちゃった!」
あははっ
じゃ、失礼します、と一礼すると、岡田さんは足取りも軽やかに去っていった。
mission complete ……
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