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幸せのステップ(5)

女性陣に突っ込まれることもなく、ひたすらによによと意味あり気に見守られている…気がする。 逆に怖い。 いつもなら、囲まれて質問攻めにあって、答えるまで解放してもらえないのに。 首を捻りながら係長を見ると、そっと親指を立てていた。 うーん、何か言った?何かした? パソコンにメールが届いた。 係長からだ! 慌てて開くと 『心配するな。部長命令で阻止した。 詳細は後で。 なお、読んだらすぐに破棄するように。』 頷いてさっさとゴミ箱へ。 跡形もなく消去。 部長命令?達也さん、何かしたんだ…まさかカムアウトした? いや、それなら今頃ここは阿鼻叫喚修羅場と化しているはず。 取り敢えずホッとして、仕事に集中することにした。 昼休み…… 満面の笑顔の女性陣と入れ替わり、係長にガードされて食堂へ。 入った瞬間、あちこちから視線を感じ、こちらを見てヒソヒソされてるのを感じた。 「若林君、気にすることないからね。」 「はぁ、はい。」 なるべく目立たない所を選んでくれ、奥側の席を勧められた。 「大丈夫。すぐに治まるよ。 それに今回はうちの女性陣が押さえにかかってるから、心強いよ。」 「え?どういうことですか?」 「君の“お祝い会”は女性陣だけで。 スポンサーは部長で、彼のポケットマネーで開催。 誰かが何か言っても守ってやってくれ、って頼んでおいたから大丈夫。 ほら、皆んな何も追求せずに静観してるだろ?」 「そういえば…取り囲まれなかった… やっぱり部長と係長のお陰なんですね!? ありがとうございますっ! ご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんっ!」 「なんのなんの。相手は誰か、ぜーんぜん気付いてないみたいだけどね、ふふっ。」 そう言いながら、係長がお弁当の蓋を開けた。 おおっ。今日はちらし寿司!?美味しそう!

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