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幸せのステップ(6)

「係長、今日も美味しそうですね! 安定の愛夫(あいさい)弁当…係長のお手製ですか?」 「ありがとう。うん、今日は俺。 アイツも食べてるはず…ほら、あそこ。」 少し離れた窓側にひとり、強面の青崎さんがいた。 両手を合わせて…ははっ、かわいいなぁ。 今、正に蓋を開けて…あはっ、顔が綻んでる。 「係長、青崎さん、めっちゃ嬉しそうですよ。 顔が綻んでます。」 「そう。良かった。 アイツ好き嫌いないから助かるんだ。 弁当の中身が似ててバレると困るから、ワザと離れて食べさせてるんだよ。 ちょっと可哀想なんだけど。」 「あ、でもそれ分かります。俺もそうですから。 いくらアレンジしても似ちゃうんですよね。 材料が一緒だから仕方ないんですけど。」 「ホント。俺達苦労するよな。」 「誰が苦労するって?」 「「部長っ!」」 「ここ座るぞ。 若林、お前の指輪で朝から話題の人になってるぞ。」 「…はぁ…やっぱり…1週間コースですかね…」 「うちのスピーカー軍団を懐柔したから大丈夫さ。2、3日で収束に向かうはず。 ね、部長?」 「寺橋の交渉術はピカイチだからな。 ありがとう、助かったよ。」 「いえいえ、お安い御用で。 部長、噂が収まるまで若林君と別々に帰った方が良くないですか? 今日は電車ですけど、良ければ俺、明日から暫く送って行きますよ。」 「そんな!そこまでご迷惑掛けれません! 俺、ひとりで帰るから大丈夫です!」 「その“ひとり”が心配なんだよ。 寺橋、頼んでもいいか?は大丈夫なのか?」 「ええ、ご心配なく。アイツ俺に合わせてくれますから。」 「涼しい顔して惚気やがって…後で彼にも頼んでおくよ。 ちゃんとお礼はするからな、頼む。」 「部長に『頼む』って言われたら張り切るしかないでしょう…くくっ、若林君、重たい愛情だけど、受け止めてよね。」 「はぁ、はい…」 達也さんの熱い視線を感じて、顔を上げられない俺なのだった。

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