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幸せのステップ(13)
脱衣所で服を脱ぎながら、心の中で文句を言う。
また流された。達也さんの思うツボだ。
いいようにあしらわれて手の平で転がされてる気がする。それは否めない。
でも……
シャワーの熱い飛沫を浴びながら考える。
嫌じゃないんだ。嫌、というどころか…寧ろそうなるのを期待するフシがある。
俺ってこんなキャラだったっけ!?
達也さんに構われて転がされて…甘やかされてる。
それが何とも心地良くて堪らない。
今まで女の子と付き合っても、こんな気持ちになんてならなかった。
時折、甘やかされるようなシチュになったこともあるけど、ただただ気持ち悪いだけだった。
もう達也さん以外の誰かとなんて、そんな気すら全く起こらないけど。
俺が末っ子だ、というのも関係してるんだろうか。溺愛されて育って、それが当たり前だと思っていた。
習慣とか育った環境というのは恐ろしいもので。いつしか俺は、無自覚に甘えっ子体質に順応してしまったんだろう。
愛するひとにそうされるのは、甘美な毒のようで、気が付いた時にはそれが全身に回っているんだ。
もう離れられない。離れたくない。
他の誰かに触らせたくない。
猛烈な独占欲が湧き上がってきた。
こんな気持ちになったのは、偶々見かけたあの光景のせいだろうか。
昼休みも終わりを告げる頃、他部署の女性が2人、廊下で達也さんの行手を阻み、何か立ち話をしていた。
うっとりと頬を染める彼女達に、軽い苛立ちを覚えながら追い越した。
『俺の達也さんに色目を使うな!』
瞬間喉元まで出かかった声を押し込めたのだが、その後は時間に追われて忘れてしまっていたのだ。
愛されたい、愛したい、
離さない、離れない。
強い思いは指先に伝わり、俺はボデイソープをたっぷりと手に取った。
そして上半身を壁に寄せると少し足を開き、その手を後孔に伸ばした。
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