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幸せのステップ(14)
くちゅっ、ぬちゅ
「…はぁ…」
堪えていた吐息が、口の端から零れ落ちていく。
もうすっかり自分で準備することも覚えた。
それは今でも羞恥を伴う行為だけれど、“彼”を受け入れる儀式のようなものだと自覚してからは、丁寧にしっかりと行うようにしている。
シャワーヘッドを横にずらすと、髪の毛の雫が滴り落ちて頬に当たった。
壁に散ったお湯がミスト状に霧散して、たちまちバスルームが白く煙っていく。
自分の指だけで感じそうになるのを我慢して、何とか洗い終えた。
はっはっと、短い呼吸を繰り返し息を整えた後は、今から愛されるであろうこの身体を残すところなく洗い上げる。
この身体はいつまで愛してもらえるのか。
いつまで一緒にいられるのか。
幸せだからこそ怖い。失った時のことを考えると。
時々浮上するマイナスの思いを首を振って追いやった。
愛している、愛されている。
離れない、離さない。
呪文のように繰り返しながら、湯船に清めた身体を沈めた。
ガチャッ
「おーい、弘毅!?大丈夫か!?」
「え!?達也さん、どうして?」
「お前が長いこと出てこないから、寝落ちしてるんじゃないかと心配になって…逆上せるぞ、早く出ておいで。」
「はい、大丈夫です。ちょっとぼぉっとしちゃってて。」
「水持ってきてやる。歩けるか?」
「大丈夫です!」
達也さんは心配そうに俺を見ていたが、頷くとキッチンへ向かったようだった。
俺は慌てて浴槽から上がると、バスタオルであちこち拭った。
「弘毅、取り敢えずこれ飲め。」
「すみません、ありがとうございます。」
逆上せる寸前だったのか、3分の2くらいを一気飲みして大きく息を吐いた。
達也さんはバスタオルで俺を包み、椅子に座らせると頭をガシガシ拭き始めた。
「達也さんっ!?」
「じっとしてろ。」
大きな手でわしわしと拭き取られていく。
気持ちイイ…
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