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幸せのステップ(16)
俺を抱きしめる達也さんの喉元から、くっくっとくぐもった笑い声が聞こえ、身体が小刻みに震えている。
「くっくっくっ…俺達、お互いにお互いを主張してたんだな!あははっ!
あのなぁ…今までも耳からタコがぶら下がり落ちていく程言ってきたけど、俺が弘毅を離すわけないだろ?逆に俺がジジイになっても捨てるんじゃないぞ!
俺はシワシワになってもお前を離してなんかやらないからな!
…お前が不安に思うのなら、もっと今まで以上に毎日伝えるよ。
弘毅、愛してる。俺から離れるな。」
「達也さん…」
「お前もちゃんと俺に伝えてくれ。
俺を愛してる、離さない、と。」
「達也さん…愛しています。何があっても離しませんよ。」
「くっくっ…最高だな!」
ゆっくりと押し倒されて、達也さんの重みが加わった。
ベッドがぎしりと音を立てる。
顔中に優しいキスが降ってきて、擽ったくて笑いながら逃げると、追いかけてきて唇を塞がれた。
「弘毅…いい加減分かれよ。
俺がお前にぞっこんだって。
好きで好きで好きで好きで…堪んねぇんだよ。
誰が何と言おうが、お前は俺のものだ!
覚えておけよ。」
両頬を軽く押さえられ、瞳を覗き込まれ、余裕のないぶっきら棒な話し方。
その口調にも、達也さんの愛が沁みている。
何度言葉にされても伝えられても、何処かしら不安が潜んでいた。
俺なんかでいいのか。
ステキな女性が現れたら、そっちに行ってしまうんじゃないか。
いや、女性じゃなくて男性なら尚更だ。
俺だけを見て。俺だけを愛して。
離さないで。一生甘やかして。
そんなドス黒い嫌な感情が胸の奥深くにあった。
「弘毅、愛してるんだよ。
俺に愛されてる自信を持てよ。」
ぽろっ、と一筋、涙が零れ落ちた。
満たされて溢れ出す思い。
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