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第4話
「ここで働きたいー?アンタがー!?」
遠野晋 ――ノアの雇い主だ――彼は素っ頓狂な声を上げた。目の前には、自分より頭一つ分はゆうに背の高い大きな男――天城が立っている。天城は晋に頭を下げた。
「はい、なんとか――お願いできないでしょうか」
「無茶言うなよ――可愛いネコと一緒にいたいんだろうけど、こっちは慈善事業やってんじゃないんだから――」
「そうじゃないです!」
天城は叫んだが、すぐ訂正した。
「いや、それ……も、ありますけど……あの、オムライスが美味しくて!自分、あんなに美味いもん食べたの初めてでして!」
深々と頭を下げる。
「ああいうものが自分でも作れるようになれたら、と思ったんです……雇って下さい、お願いします!」
「うえぇ~?」
晋は困って情けない声を上げた。こいつ確か……行動矯正中だっていう、元は敵方の作った人造兵だよなあ……全く……親父が同情してネコなんかしょい込むから……
「アンタ、資格は?」
「は、資格、と言いますと……?」
「調理師免許だよ」
「ありません……大型・特殊車両と、ヘリの免許でしたら取得しておりますが」
「いるかいそんなモン!」
「晋ちゃん、雇ってやりなよ」
カウンターの常連客が面白そうに言った。彼は入院している父の同級生で、悪友でもある。
「親父さんが生きてたら、雇ってやれって言ったと思うよ?」
「親父は死んでないっつーの!」
「死なずに済んだのその兵隊さんのおかげじゃないか」
確かにそうだが……晋は渋い顔で天城を見た。医者にも、あの応急手当が無かったら父は助からなかったかもしれないし、または植物状態になっていた可能性もある、と言われている。
「んもう……それじゃあ、免許取れるまでは見習い扱いだぞ!?給料もそんな出せないからな!」
「かまいません、ありがとうございます!」
天城にがっしりと手を握られて、晋は悲鳴を上げた。
「うわあ!止めてくれ!」
ぽかんと一部始終を見ていたノアが訊ねる。
「天城さん……ここで働くの……?」
「そーだよ、人手は欲しいからな、仕方ねえだろ……オイ!手ェ放してくれ!痛いって!骨が砕けるよゥ!」
天城の手を振りほどこうとしている晋に、今度はノアが飛びついた。
「おっちゃん!ありがとう!」
「こらネコ!懐くな!」
しがみつかれて悲鳴を上げた晋に、常連客が笑って言った。
「モテモテで良かったなあー、晋ちゃん!嫁さんに逃げられた傷も癒えただろ!」
「癒えるわけがないだろー!?ちくしょー、面白がってねえで食ったらとっとと帰ってくれッ!」
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