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第41話

命じられて床に跪き、音羽はズボンを下ろした男の下腹部に顔を近づけた。 性行為は人造兵にとっては意味を持たないので、そうさせられても何を感じるという事も無かった。ただこれは音羽にとっては初めての事で、どうしたらいいのか予測がつかない。 音羽の隣にしゃがんだ越野が、懲罰棒で音羽を小突いた。 「あ――!」 思わず苦痛の声を上げた音羽に、越野は苛ついた風に命じる。 「愚図愚図してないでさっさと舌出して舐めてやれ。噛むんじゃないぞ」 棒を使われるのが辛く、音羽は言われた通り舌で男の性器を舐め上げ始めた。 「どうよ。ネコと同じか?」 脇から覗き込む男が訊ねる。 「まだわかんねえ――でも、悪くない感じだぜ」 「人造兵ってのも、色んな使い道があるもんなんだな」 要求されるまま音羽は男のそれを口中に含み、暫くしゃぶった。どういうわけか口の中のそれが硬くなり、体積を増してくる――息苦しくなって思わず動きが鈍った音羽の背に、いきなり苦痛が走った。 「ウグ――あ!」 音羽は背を仰け反らせ、男のものを口から離した。途端にまた、懲罰棒が音羽の肌に押し当てられた。悲鳴を上げて身を捩った音羽の髪を、下半身をしゃぶらせていた男が掴む。 「越野!良いとこだったんだから邪魔するなよ!――ホラ、さっさと続けろ」 音羽の顔を再び自分のそこに押しつける。越野がニヤつきながら言った。 「あんまりぎこちなくてヘタクソだからさ、気合入れてやろうかと思ったんだよ――しかし、そんなにイイのか?」 「気になるなら――お前も試せばいいだろ」 呼吸を早めながら男は答えた。 「そう――そうだ――もう少し力入れて吸いつけ――」 音羽の頭を両手で押さえ、男は腰を動かし始めた。硬くなった性器で喉の奥を突く様にされ、呼吸が不自由になったが従うしかない――そう思って耐えていた音羽を、なぜか再び懲罰棒の苦痛が襲った。 「ひ!?――アァ!」 こらえきれずに音羽は叫び声を上げ、男の下腹部から顔を離した。仰け反った胸元へ更に棒が押し付けられ、堪らず音羽は床に蹲った。 「従っ……」 音羽は床に額を付けて蹲ったまま声を振り絞った。越野が屈み込み、顔を近づけて訊ねる。 「あァ?なんだって?」 「従っ、てるはず――なのに――なぜ……」 「なぜ痛めつけられるのかって?そりゃあお前……面白いからに決まってんだろ」 面白い?一体なにが?音羽は混乱した。 政府軍にいた間、あの道具で罰せられるのは何かこちらに明らかな失敗があった場合だけだった。痛い目に遭わされるのがイヤならば、努力して良い働きを見せればいい。上官を満足させられれば罰せられる事もない。しかしこの場合は?苦痛を避ける術は音羽(じぶん)にはないという事なのだろうか? 「おい越野!ちょっかい出すな!」 男が怒鳴りつける。 「いいじゃねえか――自分一人で楽しみやがって」 「クソ、集中できやしねえ。何か潤滑剤代わりになる物無いか?下に突っ込む」 「下に?お前そういう趣味だったの?」 「ネコ相手ならな。こいつだって似たようなモンだろ」 「ハンドクリームならどっかにあったなあ」 見物していた男が辺りを探り、容器を見つけ出してきた。 「古くねえか?コレ」 「知るかよ。心配なら買って来りゃいいだろ」 「まあいいか――おい、ケツ出せ」 どうしたらいいのか一瞬わからず戸惑った音羽の頭を、男は床に押し付けた。 「こうやるんだよ。そのままじっとしてろ」 高く上げさせた無防備な音羽の尻に、越野がまた懲罰棒を押し当てた。悲鳴を上げて逃れようとした音羽を、越野が捕まえる。 「越野!いい加減に……」 「俺にはこっちの方が面白いんだよ。おい、お前らちょっと押さえてろ――すげえ反応だ」 「遊ぶのもいいが、先に犯らせろよ!」 「まあ待て。時間はたっぷりあるんだから後で二人きりにしてやるよ――なあ、こんだけ痛がるのに、痕も残らないんだぜ。一体どういう仕組みなんだ?」 床に仰向けに押さえつけさせた音羽の身体のあちこちに、越野は懲罰棒を試すように当てた。その度音羽は激しく身体を波打たせ、悲鳴を上げて悶え苦しんだ。 「意識を失うって事はないんだな」 「そこまでの痛みじゃないんじゃないか?」 「そうは見えないがな……相当効いてそうだが」 「気絶させちゃ意味が無いからそうならないように作ってあるんだろう……楽させるための道具じゃないんだ」 懲罰棒を手にそう言った越野を、音羽は喘ぎながら見上げた。一体いつまで続けるつもりなのだろう?逃げ出したい――その音羽を見下ろしながら越野が呟く。 「……撫でるだけでこの反応だろ……体内に突っ込んだら……どうなるか……」 なか、とは?意味が―― わからない、そう思った音羽の身体を、信じられないほどの苦痛が貫いた。音羽の両脚を開かせた奥に――越野が棒の先端を突き入れたのだ。 「ア!あぐッ――ヒ……ィ!」 かなり深くまで挿し込まれた棒に体内をグリグリと嬲られて――辛さの余り何度も身体を引き攣らせ、耐え切れなくなってついに音羽は小水を漏らしてしまった。 「垂れ流しか――こりゃ面白ぇ」 聴覚に障害が出たらしく、越野の声が二重に響きながら遠ざかっていった。視神経もやられたのか焦点が合わず視界がぼやける――面白い?この状態の一体どこが?やはりこの男の言っていることは――理解できない――

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