6 / 153
第一章 編み込まれる思いの数々
翌日から、旭の編み物は始まった。
いろんな色の毛糸球をいくつも用意して、丁寧に編んでゆく。
初めの頃は昼休みだけだった編み物だったが、日を重ねるにつれ10分間の休み時間にまで手を動かすようになった。
逸朗は、それを窓際からいつも見ていた。
編み物をする旭は、とても幸せそうな顔をしている。
軽く瞼を伏せ、口元に笑みを作って。
(俺のことを考えながら、編んでるのかな)
そう思うと、悪い気はしない。
(いや、優秀なαである俺は、Ωの編んだセーターなんか着れないんだ!)
どうやって断ろうか、などと考えていると、友人たちが集まってくる。
ともだちにシェアしよう!