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第三章・4

 逸朗は、少し余裕がでたので、腕組みをして旭を見た。  難関を突破できたのか、再びスムーズな編みに戻っている。 (俺のために、ご苦労だな)  だが、Ωの宮城とは付き合えない。  俺はいつか、優秀なαの女の子と、劇的な恋に落ちるんだから。  始業のチャイムが鳴り、旭は息をついて首を回した。  肩に手を置き、揉んでいる。 (編み物って、結構大変なんだな)  旭をいたわる心情が芽生えたが、逸朗は自分でそれに気づかなかった。

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