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第一章・5
セーターも、後ろ身頃、前身頃が完成すると、がぜん存在感を増してきた。
クラスの女子が触発されて数名編み物を始めたし、先生まで、どこまで出来たんだ、などと訊ねてくる始末だ。
旭の編むセーターは、とても温かそうな色合いだった。
クリーム色に、オレンジ。
アクセントに赤。
暖色系でまとめられたそれは、旭の人柄そのものだった。
それを窓辺で見守る逸朗に、またまた友人が茶化してきた。
「いいよな、手編みのセーター」
「心まで、あったかくなるよな」
「真柴、お前は宮城に何やるんだよ。クリスマスプレゼント」
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