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第一章・9
逸朗が選んだ、旭へのプレゼント。
それは、毛糸の手袋だった。
淡いコーラルピンクに、グリーンアップルの2色で、手の甲には雪の結晶のような模様が入っている。
「セーター編むときに、散々指を使ってるからな」
疲れた指先を、この手袋で温めて欲しい。
そんな気持ちを、込めた。
明るい赤に、金のリボンがかかった包みを手に、逸朗はいつしか笑みを作っている自分に気づいた。
(はッ! いや、これは、あくまで義理だから!)
プレゼントのお返しもできないような男では、αがすたる。
それでも次の瞬間には、宮城は喜んでくれるかな、などと思いをはせていた。
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