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第二章・9

 妙だ。  変なお願いだ。  いぶかしく思いながらも、逸朗はソファに深く腰掛けた。  開いた逸朗の脚の間に、旭がすっぽり収まった。 「もたれても、いい?」 「別にいいぜ」  はぁ~、と深く息を吐きながら、旭は逸朗にもたれてきた。 「真柴くんの胸、広いね」 「そうか?」 「ね、こう、腕を前にまわしてくれないかな」 「こうか?」  逸朗が背後から、旭を包み込むような姿勢になった。  旭はその腕に手を掛け、ぎゅっと握った。  暗闇に、オレンジの火が揺れる。  1本だけの小さなキャンドルは、ずいぶんささやかな光を放っていた。

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