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第二章・15

 洗い物を終えてキッチンから出ていた逸朗は、旭の電話を聞いていた。  聞いてしまった。 (今から帰るところ、だなんて)  逸朗は、ソファでぬくもりを分かち合った旭のことを思った。  一緒にキャンドルの光を浴びた旭のことを思った。  だけど、仕方がないよな。  なにせ相手は、あの船津先輩だ。  宮城の憧れの人だ。  俺と天秤にかければ、どちらが大きく傾くかなんて、解り切ってる。  逸朗は、一度キッチンへ引っ込んだ。  そして、旭が電話を切った頃を見計らって、リビングへ出た。

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