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第二章・21

「ホントなら今夜は、成海(なるみ)と過ごすはずだったんだけど」    旭は、表情を固くした。  今川 成海(いまがわ なるみ)  船津と同じ2年生の、現・恋人だ。 「インフルエンザにかかっちゃったんだ。可哀想に」 「そ、そうですか」 「ただの風邪なら、添い寝してあげるんだけど。ウィルスを拡散しちゃマズいからね」 「そ、そうですね」  僕が今、目の前にいるのに。  今川さんと一緒にいられない理由を話すなんて。  これは、あれだ。 『勘違いしないでよ、君は恋人に昇格したわけじゃないんだ』  こういうことを、オブラートに包んでやんわりと釘を刺しているのだ。

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