80 / 153

第四章・13

「誰だよ、お前」  暗くてよくわからないが、ソファの男が不機嫌な声を出した。 「あ、すみません。部屋、間違えちゃったみたいで」  素直に謝り、逸朗は立ち去ろうとした。 「……けて。助けて!」  何?   今誰か、助けて、って言ったか?  きょろきょろしている逸朗の顔までは、旭からは見えない。  ここにやってきたのが、『真柴くん』とは知らない旭だった。  ただ、誰か第三者が入って来た気配は察知した。  小さなくぐもった声で発した、SOS。  馬鹿、黙れよ、と口を手でふさがれてしまった。

ともだちにシェアしよう!