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第四章・13
「誰だよ、お前」
暗くてよくわからないが、ソファの男が不機嫌な声を出した。
「あ、すみません。部屋、間違えちゃったみたいで」
素直に謝り、逸朗は立ち去ろうとした。
「……けて。助けて!」
何?
今誰か、助けて、って言ったか?
きょろきょろしている逸朗の顔までは、旭からは見えない。
ここにやってきたのが、『真柴くん』とは知らない旭だった。
ただ、誰か第三者が入って来た気配は察知した。
小さなくぐもった声で発した、SOS。
馬鹿、黙れよ、と口を手でふさがれてしまった。
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